家族信託は、高齢の家族の資産などを管理することができるようになります。しかし、信託期間中に委託者や受託者が破産する状況になった場合、家族信託はどうなるのでしょうか。この記事では、家族信託中に破産してしまった場合の影響について解説します。
破産とはどんな状態か
破産とは、債務者が何らかの理由によりお金を返すことができなくなった際に取る清算手続きの方法です。破産手続きを行うことで借金の返済義務がなくなりますが、債務者の資産は調べられ、処分されます。
家族信託に影響はあるか
破産すると資産は債権者に配当されますが、家族信託はどうなるのでしょうか。
- 委託者が破産した場合:家族信託に直接的な作用はありません。信託財産は受託者が管理するものになっているため、債権者は債権の回収や差し押さえはできません。
- 受託者が破産した場合:受託者が破産した場合、受託者をやめるか継続するかは委託者と受託者で話し合います。信託財産の現金は差し押さえの対象になる可能性がありますが、信託専用口座は差し押さえ対象外です。不動産は差し押さえることができません。
家族信託の倒産隔離機能とは
倒産隔離機能とは、信託にした資産が受託者が処分、管理することになり、信託財産は独立した資産として扱われることを指します。そのため、委託者や受託者が破産しても、信託財産には影響がありません。
詐害信託と信託内借入
詐害信託とは、債権者を害することを分かっていながら、差し押さえから逃れる目的で行う信託です。このような信託は無効になり、結局は資産を差し押さえられます。また、信託財産内で融資を受ける信託内借入をしている場合、破産する可能性があります。信託財産で返済がまかないきれない場合は、受託者の固有財産で支払う必要があります。
信託を組めば破産しても大丈夫か
家族信託を組んでおけば、資産は守れると安易に考えると、詐害信託となる可能性があります。信託を悪い方向で活用して資産を守ることはできません。信託を組む前に家族の財政状況を確認し、問題が起こる可能性がないか確認することが重要です。
まとめ
家族信託を活用することで家族の資産を管理、処分することができますが、その前に家族の財政状況を確認しておくことが重要です。委託者が意図的に破産した場合、信託で守られていた資産は差し押さえられます。また、信託財産内でお金を借りていて破産してしまった場合は、受益者が責任を負って自分の固有財産からお金を返さなければなりません。家族の資産を管理するはずの家族信託が、家族間のお金のトラブルを呼び込む可能性があります。信託を組む前に家族の財政状況を確認し、問題が起こる可能性がないか確認しておくことをおすすめします。